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東京の橋 水辺の都市景観  伊東孝 鹿島出版会

TSUKASA WATANABE

墨田区菊川に住んでいた頃、愛犬ルイの散歩コースは2つあった。ひとつは猿江恩賜公園から横十間川を南下しリバーサイドから木場公園に入って、ドッグランで遊んでから大横川で帰ってくるコース。もうひとつは大横川、小名木川から清澄公園に向かい仙台掘川経由で木場公園に入って遊んで帰ってくるものだ。大体1時間半程度、毎朝の日課であった。休みの日は清澄公園から隅田川テラスを散策したりした。とにかく運河が多く、当然のように橋も多い。川の十字路を見たのも初めてである。明治・大正時代に架けられた橋は頻繁に修復や架け直しが行われていた。マンションも大横川沿いの6階だったので見事な桜並木を見下ろして楽しんだものだ。都の清掃局の船が行きかう姿は情景的で好きだった。思い出深い橋の中でも清洲橋はどこよりも美しい。初めて見たときの感動はとてつもなかった。フォルムも柱脚のディテールも橋下に這わされたインフラの納まりもきれいだった。吊ロッドに沿って点状に照明が付いているのだけは良くないかもしれないが。とにかく「橋」といものに興味を持って何冊か本を読み漁った。本書は東京の橋梁の歴史やデザインについて包括的にまとめている。特に隅田川に架かる震災復興橋梁については画一られたデザインで踏襲せず個性的な機能美を作り上げたくだりは面白い。聖橋の山田守や数寄屋橋の山口文象など建築家の仕事も多い。ピアノやカラトラヴァのように現代でも建築家の設計事例はあるが、橋を道路の一部としてではなく造形としてみると都市に対する印象が変わってくると思われる。新大橋通りや葛西橋通りなどは道ではなく橋ありきのネーミングなのだから。

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