21世紀も10年以上経過して近現代の建築史を俯瞰できる状況になったのであろうが、80過ぎの年寄がスラスラと固有名詞や時系列を間違うことなく会話できているのに違和感を感じるほどである。3年の歳月をかけてインタビューを重ねて編纂した結果であろうが論理的で挑発的な発言の端々はまさに超人。小難しい前書きのせいで買って直ぐに放り投げておいたが対話を読みだすと非常に面白かった。特に最後半の鈴木博之さんの話題あたりからは凄まじかった。個人的には戦略的であったり対抗心であったりするような方法で設計や計画をするのは好きではない。ちょうど今ゼネコン設計部と確立したアトリエと自分の仕事の3足のわらじを履いているのもあり考えるところは日々多い。堀口―丹下―磯崎―妹島の系列には一見むき出しの思想(作戦)を感じない建築家もいるが、「反」「非」「合」「潜(逃)」といったキーワードを持って見ていくと時代との関わり方次第なのだと感じることができる。明治でも戦時中でもモダニズム期でも無く、現代は流される潮流の無いのんびりした時代である。自分が考える建築がどのような意味があるのか、何が他と違うのか思い悩まされる。なにより純粋な思いを形にするのは難しい。
日本建築思想史 磯崎新 聞き手 横手義洋 太田出版
TSUKASA WATANABE
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