待ちに待った東大講義録3部作の完結編である。南陽堂に予約してサイン本を手に入れた。サインが大胆なローマ字斜体だったのには驚いた。内藤さんの過去の著作物はほぼ読んでいるが、平易な表現で本質を説き時代に警鐘を鳴らす姿勢は、建築同様一貫していて雑味がない。この東大講義録についても構造編、環境編の前2冊とも自分の進むべき道を照らす、といったら言い過ぎかもしれないが、その後の血肉になったことは間違いない。そしていよいよ完結編である。期待はマックスであった。が、、、どうもおかしい。なかなか頁も進まず、頭に入ってこない。どうしたことか。時間を空けて読み直してみたがやっぱりダメ。この数年で僕は良くない方向に変わってしまったのだろう。読み手に受け入れられる余裕がないと唯の文字の羅列、言葉の掃溜めにすぎない。漱石の晩年の随筆「硝子戸の中」でも新聞連載に向けて読み手との心境のギャップを心配していた。もう一度、内藤さんの言葉を素直に受け止められるよう精進しよう。本は待ってくれる。
形態デザイン講義 内藤廣 王国社
TSUKASA WATANABE
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