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建築巡礼35 ルイス・カーン建築への意志 松隈洋 丸善

TSUKASA WATANABE

書棚を数えるとルイス・カーンに関する本だけで40冊もあった。ほとんどマニアなので関連本が出ると大抵買ってしまう。その中でも頻繁に手に取るのが、この丸善の巡礼本である。A5版で、しかも薄いのでちょっと持ち出すのにとても便利で内容も驚くほど充実している。実現した14のプロジェクトに対する松隈さんの論評はわかりやすくも独自性が際立っている。時系列にキーワードも提示しながら書き進められているためか、天才カーンの確立していく思考を疑似体験できるようで、こっちまで頭が冴えわたっていく気にもなる。これだけの内容をわずか100ページにまとめる作業は想像を絶する。作品を巡り、カーン自身の講演録や掲載誌、研究本をくまなく読まれたのは言うまでもないだろう。ただし、カーンは知れば知るほど難しい方向に行ってしまい、結局カーンの残した生の声と作品しか信用できなくなるのがマニアの中では一般的だ。それを百も承知で松隈さんは専門分野である近代建築史のバックグラウンドをちらつかせもせず、シリーズ本のコンセプト通りガイドブックとしてまとめている。香山さんの監修も影響している可能性もある。事実、松隈さんの書かれた著作のなかでも群を抜いていると思う。逆に巡礼本のなかでも人気本であるのも間違いない。

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