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建築の際 東京大学情報学環連続シンポジウムの記憶 平凡社

TSUKASA WATANABE

情報学環で学ぶ院生を中心に企画され2008年から2014年まで実施されてきたシンポジウムをコンパクトにまとめられた記録書。建築の周辺を単に論じる体ではなく建築起源や発展に関わる諸問題を議論するのが目的であろうが、各パネリストが自らの作品を延々紹介して本題に入る前に質疑を挟んで終わってしまっている印象が強い。おそらく編集上ダイジェストに本をまとめられたのであろうが、カットされた対話の方が重要だった気がする。。結局途中で飽きてしまって読み切れなかったが藤森さんの言葉は胸に残った。「新石器時代は最初のインターナショナルスタイル」という指摘は面白いが、何と言っても「建築の純度の低さこそが魅力」といった表現には感銘を受けた。ちょうど1週間前に福井で事務所勤務時に担当した中学校の10周年記念式典に参加してきた。建築と教育について地域を巻き込んだ野心作であったと改めて痛感した。多くの方の好意と知識は確実に子供たちの夢へと繋がっていた。僕自身、10年前は未だ設計監理の経験が乏しかったが記憶に無いくらい無我夢中だった。開校してからの生徒と教員たちの迷いながらも勇気を持って歩んでいった軌跡は建築に関わることの責任の大きさを感じた。ただし合理的に完成されたモノは安心かもしれないが、完成形が見えない中、全力で取り組んで何時か実を結ぶ日を信じて進む姿はとても気持ちが良いものかもしれない。

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