先日2つの新しい門出に立ち会う機会を得た。ひとつは後輩の結婚式。旧軽井沢のオープンな教会で式が行われ、披露宴も余計な祝辞や余興が無くアットホームな雰囲気で溌剌とした若い2人にふさわしい式であった。結婚と共に独立開業という人生の転機を力強い挨拶で締めくくりこちらも身が引き締まった。もうひとつは恩師の傘寿の祝い。六本木の国際文化会館のホールで行われたお祝いの会は百数人の弟子たちやフランス料理、上海の娘家族からのスカイプ中継などエレガントな印象であった。変わらぬ建築への意気込みを宣言される場面もあり優雅な雰囲気だけでなく熱くなる時間も多かった。この2人の建築への思いは槙さんの対談で印象的だった「建築をする」という言葉と何か共鳴し感慨深かった。建築をすることは生活の一部であり人生そのもの。幼少期の経験や多くの人との出会いは意識、無意識問わずにその人の形成に反映されていく。建築をすることにはアマチュアもベテランもなくその時の断片であり、変わらぬ信念と自由さにより表現される。どのような経験をするのか、どのような人に出会うのか、そこで何を感じたのか、変わらぬものを持ち続けることができるのか、いかに自由に表現できるのか、がとても大切。
建築から都市を、都市から建築を考える 槇文彦 聞き手 松隈洋 岩波書店
TSUKASA WATANABE
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