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丹下健三を語る 初期から1970年代までの軌跡 槇文彦・神谷宏治編著 鹿島出版会

TSUKASA WATANABE

建築家の自伝や評伝よりも弟子たちが語る作家論は面白い。文豪の娘や孫が書き記した人物論のように虚飾や見栄がなく愛情の籠った語りなので親しみやすいのだろう。表題のごとく70年代までは作品自体の評価も高いので、その製作現場はスリリングで読みごたえがある。ただし勝手な印象論からいえば、丹下健三とは国家や権力に固執しすぎたこととモダニズムの先輩や同志が先に世を去ってしまったことから模倣や意識する相手がいなくなったことが晩年を寂しいものにした気がしてしまう。ちょっと言い過ぎか。どうしても巻末にまとめられたモダニズム大家を見回しても、カーンのように時代や金を顧みずに突き進んだ建築家のほうを愛さずにはいられない。恐らくそういった風潮は当時もあった気がする。現代日本の組織事務所やゼネコン設計部に向けられる冷ややかな視線と同じなのだろう。クライアントも自らの事務所も大きくなると身動きがしづらくなり後戻りできない、といったこともあるのだろうか。建築に作家性を求めすぎるのだろうか?「カラマーゾフの兄弟」のように1人で作り上げた超大作とは建築では不可能なのだろうか。

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