木島作品や人柄について生前交流のあった建主さんから飲みの席で熱く語られ、すっかり魅せられてしまった。その明け方にアマゾンで注文した3冊のうち1冊がこの孤風院白書である。木島さん本人や孤風院に対する魅力は尽きないが、なにより本の構成が良い。モノクロの写真が数枚続いたのち、4頁に及ぶデカデカとした文字の仕上表。講堂の歴史や取壊の経緯に触れた後、移築工事の奮闘記に進むかと思われたが、阿蘇の四季だよりが間に挟まっている。さすが植田実編集。日常の風景描写がなんとも暖かい気持ちにさせる。一度は消え去る運命だった建物が静かに季節を重ねていく。木島さんの文章も美しく、心地よい。取壊、保存運動、移築といった荒々しさではなく、建物が全うするべく穏やかな時間を感じさせてくれる。
「孤風院」白書 住居に変身した明治の講堂 木島安史 住まいの図書館出版局
TSUKASA WATANABE
Comments